絶対じゃなく、できたら

 “死ぬまでに一回は食べてみたいなぁ”

 “死ぬまでに一回は行ってみたいなぁ”

 “死ぬまでに一回は見てみたいなぁ”

 “死ぬまでに、もしも叶ったら、嬉しいなぁ”

これは私がよく口にする言葉です。

大きなことから本当に些細なことまで、「大袈裟だよ、絶対叶うよ、そんなこと」と言われることにまで割と使います。

“死ぬまでに絶対!” じゃなく “死ぬまでに、できたら…” の感じ。

別にマイナスな意味はなく、とっても前向きな気持ちからくるものです。

 

だって人っていつ死ぬか分からない、今日お話したあの人に明日はもう会えないかもしれない、夜いつも通り布団に入ったのに明日の朝は目を覚ますことができないかもしれない。

常に意識している訳ではないけど、ふとした瞬間に全てを支配するような、そんな“死”。

でもそれは、ありきたりだけど“生きる”ことに繋がるのではないでしょうか。

明日、今日この瞬間どうなるか何が起きるかなんて誰にも分からないから、ちょっと部屋を片付けて、ちょっとゆっくりお風呂に浸かって、ちょっと寝る前に考え事をしよう。

朝ちゃんと目が覚めたら、少しボーッとして、見ていた夢のことをぼんやり思い出す…なんて毎日が送れたら良いですよね、それで満足。

 

だからこそ私は “死ぬまでに、もしも叶ったら” それは本当に幸せなことだと思います。

 

 

 

 

今回のSARP vol.19『S高原から』は、生と死が存在することで浮かび上がる戯曲です。

街から訪ねてくる人が楽しみだったり、とっておきの散歩道があったり、今夜のご飯が気になったり、非常に興味深い生き方に溢れています。

短い稽古時間の中、自ら課題を見つけ、発見を繰り返し、次に繋げる毎日です。

 

穏やかで時に激しくて、いたって日常的な異空間?である、S高原のサナトリウム

私たち自身の体と声で飛び込める日を心待ちにしています。

 

 

 

それでは今回は、この辺りで。

お相手は二回生の福島優菜でした。