言葉の海に浮かぶ愛を探して

星も凍るような寒い夜が続いておりますが、皆さん如何お過ごしでしょうか。おはようございます。こんにちは。こんばんは。皆さん、はじめまして。お久しぶりです。

 

挨拶とか時候の文とか、なんかちょっとよく分かんないですけど、くどいくらいに言葉ってそこら辺にありふれてますよね。なんで人間ってそんなに言葉に固執してしまうんだろう。言葉はあくまで実体のないものに過ぎないのに、言葉があるだけで人との距離が縮まったような気がしたり、言葉だけを鵜呑みにしてその人を分かったようなフリをしてみたり、バカみたいに言葉を信じて一喜一憂したり、振り回されたり傷ついたり。あってもなくてもいいような無責任な言葉ばかりが溢れかえっていて、本当に共有すべき言葉達は誰にも届く事の無い海に投げ捨てる。届ける勇気もないのに、憂いたり寂しがったり。面白いですね。

 

 

私は人と喋ることがとても苦手です。正確に言うと、人と喋るのは好きだけれど、言葉を正確に使う事に人一倍神経を使ってしまって、考えれば考えるほど、言葉の海に溺れるような感覚になって息が出来なくなってしまいます。傷つくのも傷つけるのも出来ればしたくないと思ってしまう強欲な人間にはとても苦痛な行為です。

 

 

生きていて今でも鮮明に思い出せる言葉って、皆さん一つや二つはあると思うんです。それはもしかしたらポジティブな言葉かもしれないし、ネガティブな言葉かもしれない。その言葉を何故覚えているのかも、人それぞれだと思いますが、私は道を歩いたりしてるとたまに、忘れられないあの言葉の匂いがすることがあります。

 

 

 

「○○ちゃんが貴方のこと、笑顔が気持ち悪いって言ってたよ」

 

 

 

夕方稽古に行く道中、寒さで鼻の奥がツンと痛くなった時、あの匂いがしました。小学生の頃、クラスも一緒で、登下校も休み時間もずーっと一緒だった友達がそう言っていたという事実が受け入れられなかった私は、幼いながらに私の何がいけなかったのか一生懸命考えました。でも何回考えても、きっとその子にも私にも悪いところはなかったんじゃないかなと思いました。いや、思うしかなかった。その子は思った事を言葉にしただけなのだろうし、それを伝えた子だってきっと私がこんなに覚えているなんて思ってもないだろうし。

 

所詮言葉は言葉です。どれだけその言葉からその人の意味を掬い取ろうとしたって、きっと本当の事なんて誰にも分からない。本当は分かって欲しくて欲しくて堪らなくても、これ以上傷つきたくないから、分かってくれないのならと、人は言葉をあやふやにしてみたり回りくどい言い方をしたりしてしまうのかなぁ。と思います。

 

煩わしくて苦しいだけの言葉なんてない世界に生まれたら良かった。どんなに心を込めたって、伝わらない思いは伝わらない。そういう諦めや妥協を重ねて、人は大人になっていくしかないのかなぁ。

 

 

「これからまた新しい場所で頑張っていくと思うけど、貴方の思う舞台の良さ、かっこいいと思うとこを見せつけて下さい。」

 

 

大切な友達に、地元を離れる際に菓子箱に添えられていた言葉です。春の陽気が感じられた数日前の事、スーパーに寄った時にその言葉の匂いがしました。私にとってその友達はとても大事な人で、大事だと思えば思うほど分かり合いたいと幾夜も思いましたが、無力な言葉が宙を舞うだけで他人には届かないと言うことが私にとっては大きな挫折になりました。友達も恐らく同じ挫折を同じ所で感じたと思います。それでも、決して言葉を紡ぐことを諦めない人でした。私は狡い人間だから、傷つく前に逃げてしまってそんな事出来ない。きっと大人になっても、不器用に真っ直ぐな言葉を人に届けられる人なんだと思います。この人になら、傷つけられたとしても、丁寧に言葉を届けたい。そう思えるようになってから、私の見える世界はだいぶ変わったように思います。

 

 

所詮、言葉は言葉に過ぎません。されど、言葉の持つ影響力というのは計り知れなくて、傷ついてもまた、言葉を求めてしまう。説教臭くなりますが、私にとってこの1ヶ月間、ずっと逃げていた課題と向き合う時間でした。セリフひとつにもきっと彼らの気持ちは一筋縄ではなくて、本当にそう伝えたかったのか、きっと言葉では伝えきれなかった気持ちが胸にいっぱい詰まっていて。それを紐解いていくには、3週間という時間では足りないなぁと感じたし、実力不足だなとも感じました。そうやって悩みながらセリフを出すことは私にとってとても勇気のいる事でした。勇気を出して舞台に上がれたのは、青年団の方をはじめ、先輩方、同期、後輩のみんなと御一緒させてもらう中で、この方達と会話がしたいと思う気持ちが日に日に強くなり、もっともっと愛したいなと思えたからだと思っています。ふとした時に声をかけてくださることも、演劇が大好きでとても謙虚で誠実な所も。楽屋に戻れば、わちゃわちゃしている事もあれば、将来について真剣に悩む姿、愛する人達とどうやって分かりあって行くのか。生きることに一生懸命な彼らのその人柄に惹かれて、愛おしくて。皆さんがいて下さったからこそ、言葉をもっと届けたい紡ぎたいという思いが膨らんで、無事終えることが出来ました。本当にありがとうございました。私はあまりこういう事を言う方ではないですが、皆さんのこと本当に大好きです。

 

 

カガクするココロ、Aチームのノトス公演は今日をもって最後になりました。如何だったでしょうか。ご来場頂いた皆様、本当に有難うございました。さらに有難いことに、沢山の方が見に来てくださったおかげでほぼ満員の中公演させて頂きました✨本当にありがとうございました。また、お逢い出来る日を楽しみにしております。

 

ではまた。長文失礼致しました、黒木麻絢でした。

 

公演詳細はこちら