授業紹介 サマーセッション「舞台照明(講師:岩城 保)」

【演劇コース授業紹介⑰】


「身体表現と舞台芸術メジャー」「舞台技術・公演マイナー」「アーツ・マネジメントマイナー」「演劇ワークショップ実践マイナー」で行われている舞台芸術に関する様々な授業を写真とともにご紹介いたします。

 

サマーセッション『舞台照明』

講師:岩城 保

 

今回は7月17日(水)~19日(金)に開講された、岩城先生による「舞台照明」の授業の一部をご紹介します。

*「舞台照明」:舞台照明デザインとオペレーションを行なうために前提となる知識について、実技を交えた講義を行う。

 

[講師プロフィール] 

岩城保(舞台照明家)

1964年生まれ。国際基督教大学在学中に学生団体「照明委員会」に所属、舞台照明の世界に出会う。照明デザイン会社や調光機器製造会社への勤務を経て、1990年から2012年まで劇団青年団平田オリザ主宰)に所属、ほぼすべての公演の照明プランを担当。2012年末に青年団を退団。以降はフリーの照明デザイナーとして関美能留、多田淳之介、西村和宏らの演出作品に参加。また、舞台照明の実務のかたわら、市民や学生に舞台照明を体験してもらうワークショップ活動も行っている。日本照明家協会理事。

 

 

この授業では「舞台技術基礎Ⅰ」(授業紹介ブログ )で学んだ基礎知識や技術を実際の現場ではどのように使うのかを学びます。ある物の見え方をつくり出すことを“目的”とし、光をつけることを“手段”として、最終的には“手段”を駆使して“目的”のデザインを考え、オペレーションを行えるようになることを目指します。

 

1日目は、ノトススタジオにある機材とシステムについて、復習をかねて解説いただきました。

機材の特性や仕組みを学び、“手段”をたくさん持っておくことで、“目的”を達成する方法がより明確になりました。

 

2日目の前半は“手段”となる、影について学びました。

カラーフィルターを使用したり、ゴボでパターンを投影したりして、様々な視覚的な面白さをつくり出せることを学びました。

2日目の後半は実際に、箱馬を使用して学生それぞれがデザインを考えて、実践しました。「箱馬の魅力を引き出すデザイン」を“目的”にそのためにはどのような“手段”で実現すればよいかを、意見を交わしながら考察しました。

実際に照明をつくってみると、意図していたイメージと違っていることもあり、機材を変えたり、当て位置を変えたり工夫してデザインを完成させました。

完成したものを見て、岩城先生からは空間をつくり出そうとせずに、物体を引き立てることだけを考えて、デザインをつくってみてと意見をいただきました。「箱馬の色々な表情が見えるデザイン」という新たな課題をいただいたことで、箱馬の持つ質感やシルエットを活かしたデザインが完成しました。

3日目は前日に行った、箱馬のデザインを発展させて、複数のライトの光を組み合わせた時の作用の生じ方を実技と観察を交えながら考察しました。

また、音楽を使用し、シーンの組み立てについても学びました。

前回は箱馬だけだった、光を当てるものも意見を出し合い、椅子やヘルメット、人も追加し、照明からシーンをつくり出すことに挑戦しました。

複数の照明があることで、今までにはなかった、いつ照明がついて、いつ消えて、物はどのように出てきて、いつなくなるのか、演出も兼ねて考る必要があります。シーンづくりに思考錯誤を繰り返しながらも、短い作品をつくることができました。

また、オペレーションも経験し、音楽に合わせてシーンを展開する難しさも経験しました。

照明デザインの基礎的な知識だけでなく現場で必要な様々なスキルや心得も学ぶこともできました。
裏方でありながら表現者になれる魅力を感じることのできる3日間でした。

 

 

【学生の声】3回生 亀井涼花

今回の授業に参加して、見える光を作る時の手数が自分の中に全然ないことを気付かされました。 どのような光をどう作るのか、灯体の種類は?位置は?色は?明るさは?1つの光を作る時に、たくさんのことを考え、それを組み合わせシーンを作る難しさや面白さを改めて感じました。 何を見せたいのか、見せたいものと背景との対比など、自分が今までしっかりと考えていなかった部分を考えることが出来た時間でした。 照明の難しさ、面白さ、多様さ、楽しさを改めて感じられる授業でした。

 

【学生の声】3回生 池内怜二

普段の公演では、舞台監督の仕事をすることが多いため、照明を実際の現場で扱ったことはありませんでした。今回の講義では、舞台照明を実際の公演で扱ったことのない自分でも照明の理論について学ぶことができました。実際にその場で機材を仕込み、実践するところまで体験することができ、今後、舞台監督や俳優をするときにも今回得た知識を活かした表現をしたいと思えました。