授業紹介「ヴォイス・トレーニング(講師:伊藤和美)」

【演劇コース授業紹介⑬】

 

「ヴォイス・トレーニング」
講師:伊藤和美

 

今回は、夏休み期間中の集中講義(サマーセッション)として、8月1日~4日の4日間開講された、伊藤和美先生による「ヴォイス・トレーニング*」の授業の一部をご紹介します。
*ヴォイス・トレーニング:「声を相手に届ける」ところから始まり、どこかで聴いたことのある親しみやすい曲をもとに、身体を動かしながら歌いつつ、発声・歌唱方法を学ぶワークショップ型の講義。

 

[講師プロフィール] 

伊藤和美(ヴォイストレーナー

1972年生、演劇やオペラのスタッフを務める傍ら、06年まで「時々自動」に作曲、パフォーマーとして参加。05年度文化庁派遣在外研修生として1年間渡英。現在、新国立劇場演劇研修所、座・高円寺「劇場創造アカデミー」講師。

 

この授業では、多くのミュージカルで歌唱指導を担当する伊藤和美先生に、俳優にとって重要な要素の一つである「声」のレッスンを行っていただきました。

ストレッチと声出しのレッスンは4日間毎日行いました。声を出せる状態にするための土台作りはとても重要で、とにかく楽しんで声を出すことを意識して取り組みました。

鏡を見ながら自分の口がどのように開いているのか観察し、コロナ禍のマスク生活で活用する機会の少なくなってしまった口周りの筋肉をほぐしていくトレーニングも行います。

 

伊藤先生は授業の中で、「自分の声で歌う」ことが重要だとお話しされていました。周りとなるべく同じように・真似をするように表現するのではなく、自分の声や持っているものをしっかり表現に活かすということが大切なのだそうです。

 

音源や、伊藤先生の弾くピアノに合わせ、リズムや音程など、音楽的な要素を加えながら、さらに声を出していきます。ここでも、音程やリズムを合わせることにこだわりすぎるのではなく、自分の声で表現するということを意識しながら取り組みました。

音楽に加えてボールを使ったり簡単なダンスを踊りながらなど、さらに頭の中で考えることを増やしながら歌を歌います。ゲーム感覚で楽しみながら学生も取り組んでいました。

ミュージカルなどでは、舞台上で踊ったり、段取りをこなしながら歌を歌っています。何か他のことをしながらでも、声を前に出していける力を身に着けるためのレッスンです。

はじめは戸惑っていた学生も、4日目にはスムーズにこなしていました。

活舌のトレーニングでも、母音・子音の種類や口の形の特徴など、一つ一つ丁寧に解説していただき、それを試しながら発声を行いました。

 

授業の4日目には、ソーントン・ワイルダー作の戯曲『わが町』の冒頭の構成を参考にしながら、自分たちが今過ごしている善通寺市の街並みや風景を、アニメ映画『耳をすませば』の主題歌として知られる「カントリー・ロード」の歌と合わせて発表。

「自分が歌う」からこそ意味がある歌になるよう、歌詞から自分は何を想像し、それをどう表現するのか、レッスンを通して探りました。自分の持つ故郷の原風景なども頼りにしながら、言葉と歌詞に色を付けていくための練習を重ねました。

発表では、一人ひとりが歌や言葉を使い、自分の持つイメージを観客に届けようと努力していました。

 

歌うこと・声で表現することについて、4日間かけてじっくりと向き合い、考える、学生にとって非常に有意義な時間となりました。

 

【学生の声】

加藤優和さん 4年生 身体表現と舞台芸術メジャー

今回の講義で『上手く歌うことではなく、自分らしく歌うこと』が大切なのだと学びました。
授業が始まってすぐ、伊藤先生が参加者に向けて放った「自分の声で歌ってほしい」という言葉。「自分の声」ってなんだろう?と疑問に思っていたのですが、動きながら発声していくなかでだんだんと、“上手く歌おうとしないで出される声”のことを指しているのだと分かり、「人の真似をするのではなく自分が歌うとしたらどのように歌うか」ということを心がけて歌うことが大切だと教えていただきました。
また、曲を歌う時には音程やリズムを気にしなくてもいい、というアドバイスを受け、参加者が自由に歌った『カントリーロード』は、異なったメロディーのなかに、それぞれが歌詞から感じたことが声を使って表現されていて、同じ曲なのにこんなにも印象が変わるのか、と驚きました。
多くの発見や驚き、学びを得た4日間でした!