授業紹介「リサーチ・プロジェクトⅠ・Ⅱ(講師:いいむろなおき)」

【演劇コース授業紹介⑥】


「身体表現と舞台芸術メジャー」「舞台技術・公演マイナー」「アーツ・マネジメントマイナー」「演劇ワークショップ実践マイナー」で行われている舞台芸術に関する様々な授業を写真とともにご紹介いたします。

 

「リサーチ・プロジェクトⅠ・Ⅱ」
講師:いいむろなおき

 

[講師プロフィール] 

いいむろなおきマイム俳優・演出家・振付家、いいむろなおきマイムカンパニー主宰
兵庫県立宝塚北高等学校演劇科卒業。1991年渡仏。パリ市マルセル・マルソー国際マイム学院入学。同学院卒業後、ニデルメイエ国立音楽院コンテンポラリーダンス科最上級クラス入学。翌年、審査員全員一致による金賞で首席卒業。フランスと日本でマイム、パントマイム、ダンスなどの公演活動やワークショップを行う。
1998年 拠点をフランスから日本に移し、「いいむろなおきマイムカンパニー」の名称でソロ公演・ワークショップやマイム指導・演出・振付・海外フェスティバルへの参加等、個人での活動を開始。
2003年 自身が代表を務める「いいむろなおきマイムカンパニー」で集団マイム作品の創作を開始。日本では数少ない【集団マイム劇の創作上演を続けるカンパニー】として、関西を拠点に国内外で上演を続けている。

 

今回は、サマーセッション(夏休み期間中の授業)開講の、いいむろなおき先生による「リサーチ・プロジェクトⅠ・Ⅱ*」の授業の一部をご紹介します。
*リサーチ・プロジェクトⅠ・Ⅱ:ボーダレスな表現手法を要求される現代の役者・ダンサーに向けた約2週間集中講義。国内外の講師から表現方法の多様性を学び考察し、最終日にはショーイングを行います。
【2022年度:いいむろなおき先生講義概要】
演劇における身体表現の一つであるマイム(黙劇・無言劇)を学ぶことを通して、身体が持つ表現の可能性を理解し、言語に頼らない表現方法を身につけ、そのメソッドを習得し、自身の表現力やコミュニケーション能力を高めることを目的とする。
フランスの現代マイムの基礎となったエティエンヌ・ドゥクルーのシステム「mime corporel dramatique(ミーム・コーポレル・ドラマティック)」や世界的なマイムの第一人者であるマルセル・マルソーのメソッドを中心に、身体表現としてのマイムを学び、その仕組みを理解する。

 

いいむろなおき先生は、「いいむろなおきマイムカンパニー」を主宰するマイム俳優で、日本だけでなくフランスなど世界を舞台に活動。近年では東京パラリンピック2020の開会式に出演するなど、各方面で活躍されています。

この授業では、座学と実践を通して、身体表現としてのマイム(黙劇・無言劇)を体系的に学んでいきます。また、最終日には学びの集大成としてショーイングを行います。

マイムは演劇的なドラマとダンス的な身体表現を行き来することのできる表現方法であると同時に、自らの記憶や感覚にアクセスするためのツールともなります。
自分が普段使っている身体の部位とその動きを意識しながら、指定されたテーマに沿った動きをつくっていくワークを繰り返し、自身の身体と向き合いました。

マイムの中にも多くの種類やジャンルがあり、一般的知名度の高い「パントマイム」や、俳優のためのメソッドであるフランスのエチエンヌ・ドゥクルーによる「ミームコーポレルドラマティック」など、その理論とテクニックを実践を通して学びます。

いいむろなおき先生が自身のカンパニーで創作を続ける「集団マイム」にも挑戦し、マイムによる表現の幅広さと奥深さを体験しました。

最終日には、グループや個人で創作した作品群のショーイングを行いました。


実際にないモノをそこにあるように見せたり、風船やカバンが不思議なものに見えるパントマイム的なパフォーマンスから集団マイム、ソロ作品など、今回の集中授業の締めくくりにふさわしいショーイングとなりました。

 

【学生の声】

椙田航平さん 4年生 身体表現と舞台芸術メジャー

パントマイムと聞いて僕が真っ先に思い浮かべたのは「喋れない」というマイナスなイメージでした。しかし授業を受ける中で、そのシンプルさこそがパントマイムの大きな魅力であり、それは並々ならぬ身体表現の研鑽と観客の想像力への信頼、そして観客への思いやりのうえに成り立つ「引き算の芸術」なのだと気付かされました。
今回の授業で得ることが出来た一番大きな要素は、その「引き算の美学」だと思います。日頃舞台に立つとき「どれだけ多くの情報を抱えて登場してそれを観客に伝えていくか」ということばかり考えてしまって、ついつい簡単なジェスチャーを使ったりして観客に情報を伝えたつもりになっていました。しかし今回の授業を受けて、どうすれば観客が引き込まれるような作品ができるかを考える手がかりを見つけたような気がします。いいむろさんを交えてショーイングに向けての作品づくりをしていく際も、あえて表現をシンプルにまとめ、観客に想像の余地を与えられるような作品にできるよう様々なアドバイスを頂きました。
表現者として観客の前に立つ人間として、非常に大切な考え方を学ぶことのできた一週間でした。

 

目黒眞子さん 4年生 身体表現と舞台芸術メジャー

たった一週間の出来事でしたが、この夏でいちばん密度の濃い時間でした。一人一人に向き合い、ひたすら優しく分かりやすく教えていただき、すごく貴重な時間だと思いながら一週間を過ごしました。
パントマイムを行う時の情報収集のツールとして自分の記憶を思い出し、それを再現する作業の中では、パントマイムをしようとすると普段の自然な動きができなかったり、少し誇張して分かりやすくしなければいけなかったりと、固定概念に逆らう作業を幾度も繰り返しました。自分の中にないものやあるものを見せるためにどうしたら伝わるのかいつもどうやって伝えていたのか考えて、自分が見ている自分と周りに見られている自分との差を埋める繊細な作業をしていく、自分と向き合う作業は過程が多く感じました。難しいと感じることは多かったですが、いいむろさんのアドバイスや仲間との情報共有で見えないものがどんどん見えていき、心も体も楽しい、とても有意義な時間になりました。