授業紹介「社会福祉と演劇ワークショップⅠ」

【演劇コース授業紹介⑤】


「身体表現と舞台芸術メジャー」「舞台技術・公演マイナー」「アーツ・マネジメントマイナー」「演劇ワークショップ実践マイナー」で行われている舞台芸術に関する様々な授業を写真とともにご紹介いたします。

 

社会福祉と演劇ワークショップⅠ」
担当教員:仙石桂子(社会学部准教授)・西谷清美(社会福祉学部教授)

 

今回は、演劇ワークショップ実践マイナーの授業の一つ「社会福祉と演劇ワークショップⅠ*」の授業をご紹介します。
*社会福祉と演劇ワークショップⅠ:演劇を活用したワークショップを体験し、深く考察し、その効果・方法について体系的、実践的に学びます。

 

今年度の「社会福祉と演劇ワークショップⅠ」では、社会福祉学部教授の西谷清美が理事を務める就労継続支援B型事業所たんぽぽの利用者とスタッフの方々と一緒に、社会福祉的観点から演劇作品の創作に挑みました。

学生たちは作品づくりに入る前に、「当事者研究」を体験しました。当事者研究とは、精神障がいを持ちながら暮らす中で見出した生きづらさ等を持ち寄り、仲間や関係者と一緒にその人に合った“自分の助け方”や理解を見出していこうとする研究です。

まず、当事者研究の概要を学び、2人1組でお互いの苦労の“情報公開”を行い、その後、それぞれの苦労に名前をつけ、その苦労ネームの発表を行いました。その中からひとつ研究してみたい“苦労”を選び、ホワイトボードにその“苦労”について書き出していきました。

ホワイトボードに”苦労”について書き出した様子

学生からは様々な質問や意見が出て、それにより“苦労”の中身をより分かりやすく表現していきました。当事者研究は、その場に居合わせた皆の力、「場」の力を活用し「自分の助け方」を発見するというものです。

この手法を活かして演劇作品の創作に取り組みました。普段、人には言いにくい自身の苦労や生きづらさなども、演劇だからこそ安全で安心して表現できます。

 

稽古は、事業所とノトススタジオで行われました。

事業所での台本読み合わせ


先の見通しが立たないことに不安感を覚える事業所の利用者さんもいらっしゃるので、どうなっていくか分からない不安をなくすために、普段の創作スケジュールよりも詳細に稽古スケジュールを組みました。

また、体調に不安を抱えている方には、アンダースタディ(役者に何らかの緊急事態が起こって演じられなくなったときに備えて、代役ができるように別の人間がその役を練習しておくこと)をたて、安心して創作活動に参加してもらえる環境づくりを行いました。

ダンスシーンの稽古

今回の公演は、事業所の3人の利用者さんからそれぞれの人生について話をお聞きし、

苦労や生きづらさをテーマに 3つの物語に仕上げました。学生らは、精神障がいのある役を演じるにあたり、当事者である利用者さんと何気ない話や、これまでの人生についてなど様々なことについて対話を重ねることで、自身との共通点を見出しながら演技を深めていきました。

舞台裏では利用者さんに、一緒に出演する学生がサポーターとして付き、舞台に登場する”きっかけ”を伝えたり、退場する際には足元が暗い場面では誘導したりと、利用者さんに安心して演技に集中してもらえる工夫をしました。

 

本番を迎えメディアの取材も入り、さらに緊張に包まれながら、無事2日間2公演を終えることができました。千秋楽の後、「老いと演劇」OiBokkeShi主宰で、本学非常勤講師でもある菅原直樹氏を招き、「演劇のエッセンスを社会福祉の活動にどう活かすか」と題したアフタートークが行われました。

 

当事者演劇は、病院での治療としての専門家によるモノローグではなく、当事者と一緒に作品を創り上げていく対話であり、また、仲間で演じ合うことにより、色んな作用が起きているのではないかなど従来の作品づくりとは違った視点で、本作品や創作活動について振り返りました。

 

KSB瀬戸内海放送で本公演について紹介していただきました。

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